13日の金曜日

私の身の回りには、大学を中退、休学、留年をしている人が多い。 きっとそうしない人が大多数を占めるはずなのに、なぜか多い。 そして、そういう人たちはおもしろい。とても、おもしろい。

そこで、彼らに好きなことを書いてもらったものを集めたら、とてもおもしろいのではないかと考え、この「はぐれ学生アドベントカレンダー」を企画するに至りました。 本企画では「はぐれ学生」とは、先にも述べた大学などの学校を中退、休学、留年した方、また、仮面浪人やちょっと変わった進路を選んだ方などを指すことにします。 引用元 はぐれ学生 Advent Calendar 2013


そんなわけで、わたしくりすが、はぐれ学生 Advent Calendar 2013の12月13日ぶんの記事を担当します。Tracブログが若干読みにくいうえにたいへんな長文となりますが、どうか最後までお読みいただけますと幸いです。


まずは身の上話から

わたしについてはトップページおよびREADMEに自己紹介文を載せていますので御覧ください。 わたしは4年生の姿をした2年生です。すなわち留年×2。わたしも例によってへんな学生生活を送っています。2010年度に前期入試で入学したのですが、周囲にはACだと思われています。

ところでACって何のことでしょう?

「AC」は筑波大学公式の用語では「アドミッションセンター」を指し、ここが「AC入試」という特殊な入試を行っています。情報科学類のAC入試は、主に今までに実践してきた「へんなこと」をアピールしに、「自宅の庭でジェットエンジンを作った」だの、「SELinuxをdisった」だのおもしろいネタを持った人たちがたくさん来る入試です。AC入試で入学した人たちは学生間で俗に「AC」、または「アタマ・クレイジー」「アホ・コレクション」などと呼ばれています。

∃筑波大生 ⊃ (AC ∩ 留年)

さて、彼らはこういった感じの曲芸には長けているのですが、なにぶん入試が早く、またいわゆる試験勉強をさほど必要としないので、理系にもかかわらず「数IIICを履修していない」というACたちもいます。そして、入学して即、解析学Iをはじめとする基礎科目群にいじめられるわけです。こういった経緯もありACは擢んでて留年率が高いといわれています。

実はACの留年率が高い理由は「一般に言う勉強ができない」というものはほんの一例にすぎず、実際にACを観察してみますと、起業している方が大勢いるのです。ソフトイーサ社CEOの@dnoboriさん、ゲヒルン社CEOの@isidaiさん、Has-Key社CEOの@opentakaさん、BearTail社CEOの@96kuroxさんなど、技術力、経営力、そして行動力を持ったACたちは起業し、ビジネスのほうに尽力していくのです。彼らが「勉強してる場合じゃねえ!!」とのたまい[要出典]大学生活を擲って産み出したプロダクトが、今この瞬間も世界を動かしています。


お待たせしました。ここからが本題です。ACはビジネスに傾倒するというお話をしましたし、今日は13日の金曜日ですので、以下ではわたしが最初に関わったベンチャービジネスの怖い話をしましょう。

わたしもビジネスに傾倒していた頃があります。あれはわたしがまだ大学の1年生の頃、ほぼちょうど3年前のことでした。(おもむろにサントラが鳴り出す)

2010.12

この頃からわたしが関わるようになった組織*1をM社と呼びましょう。それは、突然のSkypeコンタクト申請から始まりました。プロフィールによると、わたしの3つ上の女性らしい。M社ヘッドハンターの彼女の口車にまんまと乗せられ、組織代表者の男性と京都で会い、夢にあふれるへんな話をしてきました。その後もひたすらにうまい話を聞かさされたり、同じようにして集められてきたウェイ共と一緒に「会議」と称する集会を開いては「俺らはこんなに儲かるぞムッホッホ」みたいな中身の薄い話をしたり、大学を休んでは*2大手銀行やベンチャーキャピタル、代表者の知り合いの企業などを巡って夢を語り、「今日は商談だ」などとその様子をTwitterで実況して自慢している気分に浸ったりしました。なお、いずれも成果を結んだかどうかは、わたしは知り得ませんでした(代表者によると「極秘」らしい)。

2011.05

そうこうしているといつの間にかオフィスが港区某所に爆誕していたのでした。資金調達がうまくいったのかな?と思ったのですが、ほどなくカラクリを知りました。「受託開発」によって資金を錬成するというのです。この頃のわたしはITビジネス童貞を捨てた矢先で、「受託開発」が滅亡の始まりであるとは塵ほども思わなかったのです。むしろ、開発の成功によって与えられる報酬の額に目が眩んでおりました。なんでも、数百万円であったその案件のうち半額を持って行ってよいと、代表者自らが話したのです。それをすっかり信じこんで意気揚々と例の案件に取り組み始めたわけですが、やがてこれは炎上案件へと変貌するのでした。余計な話ですが、この頃には先ほどのヘッドハンターと代表者がデキていたようです(どこでアレしたのか知らんけどその後ほどなくしてデキ婚キメるという荒ぶりっぷり)。

2011.03

と、その前にひとつアヤシイなと思った事件はありました。2011年3月、そう、東日本大震災があったあのときです。すぐに代表者から連絡があったのですが、内容はわたしの安否確認ではなく、サーバの安否確認でした。些細なことに思われますが、人員の心配をしない経営体制というのは、人間をダメにする企業の決定的な特徴です。彼らが大事にするものは商売道具であり、人間ではありません。死にたくなければ、そういう兆候のみられる企業で働いてはいけません。

2011.05.22

炎上案件の話に戻りますが、まず、進捗がない。確かにわたしの不勉強や怠慢(「学業の優先」ともいう)もありましたが、そもそもプロジェクトに危機管理という概念がまるで無かったのが、諸悪の根源でした。大学に入ったばかりのケツの青い学生が何人かいるだけのグループがシステムを製作するということは右往左往するのは火を見るより明らかであるにもかかわらず、プロジェクトが瀕死となってはじめて騒ぎが起こったということです。クライアントの代表者さんは非常に優しいお方でしたが、それでも風当たりが強くなるのが感じられました。
進捗がないのなら錬成するしかないということで、5日間例のオフィスにこもりっぱなしになることも3度ほどあり、たくさんの単位を滅ぼしてしまいました。代表者はわたしが大学を休んでまでオフィスにやってくるのを喜んでいましたが、冷静に考えると変でした。

2011.05.24

さらに、我々の代表者が経営者としての自覚を持っていませんでした。というのも、彼は企業における「経営者責任」をまるで認知していませんでした。これには資金繰りや末端従業員のケツ拭いなどが含まれますが、わたしが上記のようなポカをやらかしたことを報告すると、「オフィス代が払えない」だの、「お前の失敗のせいで俺がオフィス代を払うのか」などとまくしたてられ*3、たいへん気の弱いわたしはオフィス賃料24.3万円を振り込んでしまいました。彼はというと「それがお前の責任の取り方なんだ」となぜか否定的。そうしてほしかったものだと思っていました。

2011.06

ここまでひどい事件が発生しましたし、よくよく考えるとこの実に半年間、一度たりともお金をもらっていませんでした。あちこちで膨れ上がる負債のにおいを感じとって初めて、M社はわたしにとって害悪であることに気づきました。弁護士のもとで働いている友人をはじめとする周囲の人物に相談をもちかけ、たくさん意見を仰ぎました。結局、6月に示談が成立したのちにM社を脱退しましたが、払われた賠償金はわたしの主張の1/3程度(両者合意の2/3)でした。そして、約束を果たさぬままいつの間にかいなくなっていました。

2011.06.09 - Present

その後彼らとは一切の連絡を断って2年半が経ち、今に至ります*4が、たまに噂を聞くに、契約書を作らないなどふざけた経営をしていたそうです。

2011.08

わたしはといいますと、事件が終結した2ヶ月後からずっと個人事業主として、ささやかながら何かをやっております。確定申告がめんどくさいです。今フリーランスとして気の向くままにやっている仕事は、主にベンチャービジネスをターゲットとしていますが、彼らは金のあるところとないところの差が激しいです。とくに生まれたてのベンチャービジネスはお金を持っていません。彼らと仕事をするときは、その報酬が1年くらい入らない覚悟が必要だと思っています。


*1 当時はまだ登記登録されていなかったのでした。以降「M社」と示しますが、わたしが関係のあった期間中は会社ではありませんでした。
*2 中間試験を休んで商談へ向かうというとってもバカ極まりない行為もやらかしました。留年のきっかけとなったのは言うまでもありません。
*3 経営者としておかしいだけでなく、どうも脅迫罪が成立するようです。Skypeのログという証跡もありましたが、後述のように結局示談としました。
*4 この記事を書くにあたって久しぶりにM社ホームページ(なぜか未だにある!!)や関係者のFacebookなどを眺めてみましたが、関係者らはもはやM社に言及することはなく、M社は存在するのかどうか判別できませんでした。


以上が、わたしの大学1~2年生の思い出であり、1回目の留年のきっかけとなったへんな出来事です。わたしの話からみなさんが何でもいいので感じ取っていただければ幸いです。

The End.

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